賞味期限切れを最後まで廃棄し続けた。飢えながらルールを守る姿は、もはや尊い。誰も救われていない。
「汝の意志の格率が、常に同時に普遍的立法の原理として妥当しうるように行為せよ。」 ── カント
HQSR(廃棄ロスの番人)型の人々は、ルールというものへの忠誠において、他の追随を許しません。閉じ込められた初日の深夜2時、消費期限を迎えたサンドイッチの棚の前に、あなたは立ちます。そして、廃棄します。世界が終わりかけていても、期限は期限だからです。
周囲は当然、猛抗議します。「食料だぞ!」「非常時だぞ!」——あなたは静かに答えます。「非常時だからこそ、食中毒のリスクは許容できない」。恐ろしいことに、この主張は完全に正しいのです。正しさと、みんなの気持ちは、別のところにあります。
HQSRの存在価値は、20日目以降に証明されます。衛生観念が崩壊し、期限の切れた総菜に手を出した数名が次々と体調を崩す中、あなたの管理する「期限内食料ゾーン」だけは、一件の食中毒も出していません。みんなは認めざるを得ませんでした。番人は、正しかった。腹は立つが、正しかった。
しかし、あなたの正しさには出口がありません。食料が尽きかけた終盤、目の前には「期限を3日過ぎたが、匂いも見た目も完全に無事なレトルトカレー」が積まれています。全員が食べました。全員、無事でした。あなただけが食べませんでした。18日目、あなたは食料の山の前で、規定通りに飢えました。その最期は誰よりも尊く、誰のことも救っていません。