この状況で唯一価値のない物を、唯一の使命として守り抜いた。その姿に全員が泣いた。金は出なかった。
「大切なものは、目に見えない。」 ── サン=テグジュペリ
KASR(ATMの守護者)型の人々は、混沌の中で「自分の持ち場」を必要とするタイプです。危機が発生した瞬間、このタイプはまず問います。「私は何を守るべきか?」——そして店内を見渡し、最も堅牢で、最も重要そうな外見を持つものを発見します。ATMです。この瞬間から30日間、あなたの背中がATMから離れることはありません。
冷静に考えれば、閉鎖されたコンビニにおいて現金の価値はゼロです。水は飲めます。おにぎりは食べられます。しかし1万円札は、燃やしても大した熱量になりません。KASRはおそらくそれを理解しています。理解した上で、守るのです。使命とは、合理性の外側にあるものだからです。
KASRの存在は、実利の面では何も生みません。しかし象徴の面では、計り知れないものを生みます。飢えと不安で秩序が崩れかけた15日目の夜、暴徒化しかけた仲間たちは見るのです。微動だにせずATMの前に立つあなたの姿を。そして我に返ります。「あの人が守り続けているのに、俺たちが乱れてどうする」——あなたは何も言っていません。ただ立っているだけで、治安を維持しています。
このタイプの唯一にして最大の課題は、使命そのものの選定プロセスにあります。同じ覚悟を食料庫に向けていれば、あなたは店長を超える英雄になっていたでしょう。しかしあなたはATMを選びました。25日目、栄養失調で膝をつきながら、あなたは最後までATMに背を預けていました。金は、一度も出ませんでした。